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FIELD SURVEY / 2026-08-07

AIクローラは、本当に日本企業のサイトへ到達できているのか

要旨

3行でいうと

  1. 計測できた86社のうち10社(11.6%)で、robots.txt では許可しているのにサーバーが拒否していました。うち8社は、Googlebot や無名のUser-Agentは通過するのにAIクローラだけが拒否されており、User-Agent の文字列で判定していることが確認できます。
  2. robots.txt にAIクローラのことを一行でも書いている企業は、86社中10社(11.6%)だけでした。残る約8割は、許可も拒否も決めていません。
  3. 外側からの検査では「IPアドレスで本物のクローラだけ許可している」設定は見分けられません。確定にはサーバーログの照合が必要です。本レポートはその限界を明示した上で数字を出しています。
01

なぜ調べたか

AIクローラの許可・不許可は robots.txt に書きます。しかし実際にアクセスを止めているのは、サーバー本体・WAF・CDN・レンタルサーバーの管理画面・セキュリティ系プラグインなど、robots.txt とはまったく別の場所です。両者は簡単に食い違います。

この食い違いは、当事者からは見えません。robots.txt には「許可」と書いてあるからです。そして robots.txt の記述だけを読むチェックツールも、「許可されています」と表示します。

調査のきっかけは、実施者である株式会社SAL自身の事故でした。自社サイトの robots.txt には GPTBot を明示的に許可すると書いてありましたが、サーバーは GPTBot に対して 403 を返していました。「許可」と書いた宣言を、当の相手が読むことすらできない状態です。これがどの程度一般的なのかを知るために、母集団で測りました。

02

調べ方

103のドメインに対し、次の手順を自動で実行しました。

  1. 通常のブラウザのUser-Agentで接続し、対照群として応答を取得する。ここで応答が得られないサイトは「計測不能」として集計から除外する
  2. barewww. のどちらで配信されているかを自動判定する(日本の企業サイトは www. のみで配信されるものが多く、これを外すと単なる名前解決の失敗を「遮断」と誤認する)
  3. robots.txt を取得し、各クローラに対する記述を解析する
  4. 6種類のクローラのUser-Agentでトップページへ接続し、HTTPステータスを記録する
  5. 拒否と判定したものはもう一度だけ接続し直し、一過性のエラー(一時的な 503 や 429)を除外する

検査した6種類は、学習用として GPTBot・ClaudeBot・CCBot、検索/引用用として OAI-SearchBot・PerplexityBot、そして対照群として Googlebot です。Googlebot を混ぜたのは、「AIクローラだけが狙って止められているのか」「自動アクセス全般が止められているのか」を切り分けるためです。

調査に使ったスクリプトは公開しています。同じ手順で再現できます。

03

結果

86
計測が成立(103社中)
11.6%
robots.txtは許可なのに
サーバーが拒否
11.6%
robots.txtにAIクローラの
記述があった
27.9%
robots.txtが無い、または空
判定件数
すべてのAIクローラが通過75
食い違い(robots.txtは許可/サーバーは拒否)10
拒否しているが robots.txt の記述と一致(意図的)1
計測不能(通常のブラウザでも到達できず)17
合計103

食い違いが起きていた10社の内訳

個別の社名は公開しません。外側からの計測では意図的な遮断と設定事故を区別できないためです。業種カテゴリ単位で示します。

業種該当/計測成立
UGC・技術系メディア3 / 5
製造(大手)2 / 13
SEO・GEO支援会社1 / 10
IT・専門メディア1 / 6
人材1 / 5
不動産1 / 5
小売・EC1 / 5

10社のうち7社は、学習用クローラだけを拒否していました。UGC・技術系メディアで比率が高いことから、コンテンツを学習に使われることへの防御として意図的に行っている例が相当数含まれると考えられます。合理的な判断です。ただしその意図が robots.txt に書かれていないため、外からは事故と区別がつきません。

残る3社は、AIクローラも Googlebot も含めて自動アクセスを広く拒否していました。このうち1社は、無名のUser-Agentは通過するのに GPTBotGooglebot を名乗ったときだけ拒否されました。既知のボット名を文字列で見て弾いているということです。

robots.txt そのものが読めない企業が6社

GPTBot のUser-Agentで /robots.txt を取得しようとすると拒否される企業が6社ありました。許可も拒否も、書いてある内容を相手が読めません。

04

数字より重要かもしれないこと

robots.txt にAIクローラのことを書いている企業は、11.6%しかありませんでした。

当初の関心は「宣言と実装の食い違い」でしたが、実際にはそもそも宣言が存在しない企業が約8割を占めました。食い違い以前に、判断材料がありません。

実態を分けると、こうなります。

状態割合
AIクローラを意識して robots.txt を書いている11.6%
robots.txt と実際の挙動が食い違っている11.6%
AIクローラについて何も決めていない約77%

最後の層で今アクセスが通っているとしたら、それは意図ではなく偶然です。そしてAIクローラの名前は四半期ごとに増えています。数年前の設定は、今はもう不完全です。

05

クローラの3分類を混同しないこと

「AIに学習されたくない」という理由で一括遮断すると、AI検索に引用される経路まで同時に塞ぐことがあります。目的が違うためです。

種類代表例止めると起きること
学習用GPTBot / ClaudeBot / CCBot / Google-ExtendedAIモデルの知識に自社が入らない
検索・引用用OAI-SearchBot / Claude-SearchBot / PerplexityBotAIの回答で出典として引用されない
実時間取得ChatGPT-User / Perplexity-User / Claude-User利用者がリンクを開いても中身を読めない

有料コンテンツを持つメディアが学習用だけを拒否するのは合理的です。一方、発見されたいB2B企業が学習用も検索用も一括で塞いでいるなら、それはたいてい意図ではありません。

06

食い違いが見つかったときの直し方

robots.txt を書き換えても直りません。止めているのは robots.txt ではないからです。次の順に確認してください。

  1. レンタルサーバーの管理画面。「AIクローラーを制限する」「AIデータスクレイパーを制限する」といった項目が用意されており、既定で有効になっていることがあります。学習用・検索用・アシスタントで別項目になっている場合は、目的に応じて個別に判断します
  2. WAF・セキュリティ系プラグイン。WordPress のセキュリティプラグインが既知ボットを一括拒否している例があります
  3. CDN。AIボットを既定でブロックする設定があり、学習用と検索用を区別せず両方止めることがあります
  4. サーバー設定ファイル。.htaccess や nginx の設定でUser-Agent判定が書かれていることがあります

直したあとは、robots.txt に意思を明記してください。書いていなければ、次に設定を触る人(自社の担当者とは限りません)が同じことを繰り返します。

# AI検索に引用されたい場合の記述例
User-agent: GPTBot
Allow: /

User-agent: OAI-SearchBot
Allow: /

User-agent: ClaudeBot
Allow: /

User-agent: PerplexityBot
Allow: /
07

この調査の限界

数字を使う前に、次の4点を必ず併せてご確認ください。

  1. IPアドレスによる許可は見分けられません。User-Agent を名乗って外から接続した結果であり、本物のクローラのIPレンジだけを許可している設定は検出できません。したがって本レポートの「食い違い」は、確定診断ではなくサーバーログでの確認が必要な状態を指します
  2. 意図的な遮断と設定事故を区別できません。外形からは判別不能です
  3. 無作為抽出ではありません。大手・中堅の著名サイトを中心とした便宜サンプルです。中小企業やレンタルサーバー上のWordPressサイトでは、比率が異なる可能性があります
  4. 単一時点・単一の接続元からの計測です。地域別・時間帯別の差は見ていません。また計測不能とした17社は集計から除外しています

確定させるには、サーバーやCDNのアクセスログで、実際のクローラのIPアドレスからのアクセスにどのステータスを返しているかを照合します。そこまでやって初めて「読まれていない」と言えます。

自社サイトを検査する

同じ検査を、無料・登録不要でその場で実行できます。結果は、robots.txt の記述と実際のサーバー応答を並べて表示します。

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